本文(Ⅰ)

2021年12月20日 15時26分 [茨城県生涯学習審議会]
 はじめに

 近の深刻化する青少年の問題行動の背景の一つに,家庭や地域における教育力の低下が挙げられます。なかでも,親の愛情不足や子育て能力の欠如がもたらす児童虐待にみられるように,子どもたちを取り巻く家庭環境は年々悪化の方向にあります。

 家庭は,子どもたちが育つ場であり,そこで行われる種々の営みが,子どもの人間形成に大きな影響を与えることは言うまでもありません。とりわけ,乳幼児期は,人間の生涯の始期として,人としてあるべき基本的なことがらを身につけさせる最も重要な時期であり,親が家庭教育について学習し,子どもの発達段階に応じて好ましい環境を作っていくことは,子どもの成長にとってきわめて大切なことと考えます。
 国では,平成13年7月に,「社会教育法の一部を改正する法律」を公布・施行し,家庭や地域の教育力の充実に関する行政の責務についての根拠規定を設けるとともに,社会教育委員に家庭教育の向上に資する活動を行う委員を加えるなど,家庭の教育力の向上に関する社会教育行政の体制整備などを促進することとしています。
 また,本県においても,「ゆうゆういばらき生きがいプラン」新茨城県生涯学習推進計画(改訂版)において,家庭や地域の人間的な関わりの希薄化が青少年に社会的モラルや自制心,自律心の低下をもたらしているため,県民一人ひとりが青少年の生活や教育に関して大人としての教育的役割を再認識し,それぞれの立場で青少年の問題に関心を持ち,手を携え,心豊かにたくましく生きることができる青少年の育成に努力することが求められるとしています。さらに,家庭・地域の教育力の向上を図るための家庭教育や子育てに関する親の学習機会の充実や,不安・悩みを持つ保護者を支援するための相談体制の整備や情報提供の充実など諸施策を積極的に展開することとしています。
 そこで,これらの問題を解決する一助として,当委員会議において,子育て支援体制づくりや青少年の健全育成を推進する家庭・地域の教育力の向上に資する社会教育の具体的方策について検討し,意見書としてまとめました。


第1章 スプリング・プランの提案

スプリングプランの提案

1 スプリング・プランの趣旨

 かつて地域には,住民が共同で使用できる「井戸」があり,そこには人間の生命維持に最も大切で,『泉』のように湧いて出る「水」を介して人々が集まり,普段の生活の中に地域の者たちが睦む潤いの場「オアシス」が作られていました。そこでは,老若男女を問わず「井戸端会議」なる交流が行われ,社会教育の基本目標でもあり,また,人々が共に社会生活を営み,強く生きていく上で必要となる「知恵」や「知識」が伝承されてきました。
 しかし,現在,水道の蛇口をひねれば「水」が出る「便利」さを得た代わりに,昔ながらの近所付き合いの中で培われた地域の教育機能は失われ,家庭・地域の教育力の低下が懸念されています。家庭単位で閉塞的になりがちなライフスタイルに代えて,社会全体で子どもたちを育むことの大切さを再考することが求められています。
 そこで「井戸端会議」のように,日常的に行われていた「心の交流」や「人間関係」を現代社会の環境の中に再生するため,「21世紀を担う子どもたちを地域社会全体で育成する」といった,地域の教育力の原動力となる住民意識の高揚を図って行くことが重要となります。
 このプランは,子ども,親,地域住民が,身近な場所で集い,自主的な活動の創出によって地域の教育力を高め,交流を深める「潤いのある地域社会づくり」をねらいとします。そのため,かつての「井戸」に代えて,貴重な社会資源でもある「学校施設」を広く地域社会に開放し,地域の教育力向上の拠点にして多様な活動が展開されるよう,社会教育の立場から支援する新たな仕組みづくりを提言するものです。

2 提言の骨子
(1) 家庭と地域の教育力の向上を図る3つの社会教育プラン
① 子どもが自ら学べる社会教育プラン(子ども自身の社会規範意識の再生)
 社会生活を営む上で重要な規範意識は,学校や家庭における教師や親との関係はもとより,子ども同士の友人関係や地域の人たちとの関係の中で育むことが大切なことから,地域で子どもたち自らが学ぶことのできる環境整備と支援策を充実させる必要があります。また,少子高齢化の中で,子どもたちが,将来,地域の中心となって地域活動を担っていく循環型社会を作っていくためには,子どものときから地域活動に関わって,社会の一員であることの自覚を養うことが重要です。
② 親が家庭教育を学べる社会教育プラン(親の教育力の再生)
 教育の出発点である家庭の教育力を高めるためには,家族の小規模化によるコミュニティの希薄化,職業生活による多忙など,大人や社会の都合で子どもたちと触れ合う時間が少なくなっている現状を改め,子どもたちと向き合う機会を増やして,親が家庭教育の重要性を学ぶことのできる環境整備と支援策を充実させる必要があります。
③ 地域住民が家庭教育を支援する社会教育プラン(地域の教育力の再生)
 若者,子育て中の人,子育てを終えた人等すべての住民を巻き込んで地域全体で子どもたちの健全育成を図る環境整備と支援策を充実させる必要があります。また,これらの活動が,地域社会の新たな人間関係を取り結ぶきっかけともなります。

(2) 地域教育力の拠点整備の推進
子どもたちを含む地域住民にとって最も身近にある小学校等の学校施設を,学校の休日等に広く地域住民に開放し,3つの社会教育プランを総合的に推進する「地域の生涯学習施設」として拠点整備を図るとともに,そこで展開される多様な社会教育をコーディネートする指導者の養成や活用支援,自主的活動のための仕組みづくりなどの環境整備と支援策を講じる必要があります。

子どものための遊び塾 浜っ子まつり 校舎
子どものための遊び塾          浜っ子まつり
(茨城県県西生涯学習センター)    (ひたちなか市立那珂湊第二小学校)


第2章 家庭と地域の教育力の向上を図る3つの社会教育プラン


1 子どもが自ら学べる社会教育プラン(子ども自身の社会規範意識の再生)

 子ども自身の社会規範意識を再生するためには,子どもの発達段階に合わせた支援をしていく必要があります。例えば,3歳までの期間は,親の愛情をたっぷり与え,子どもが常に安定感を持って行動できるようにしておくこと,新しい物事に対して意欲をもって取り組めるように育てておくことが何よりも大切です。

 子どもが成長する過程において触れ合う人の数は,多ければ多いほど学習の機会が増えるということになります。いろいろな人と知り合うことによって,一人ひとりが社会の中で占めている立場や役割等をはっきりと理解できるようになり,その結果として自分自身の立場や役割についての認識や自覚もはっきりするようになります。
 また,現在社会問題になっている,不登校や引きこもりを解消するためには,他者との共感的なコミュニケーション能力を育成していく必要があります。そこで,家庭や地域社会として心掛けなければならないことは,子どもたちに幼少期から友達と交わる機会を十分に用意し,与えるということです。地域社会が失われがちで,家庭の周辺で子ども同士が生き生きと交流しあう時間や場所がなくなりつつある現代においては,子どもたちが対等な仲間関係の中で,思いっきり自分の感情,意欲,体力等を表現し合える環境を整備していくことが大切です。また,子どもの自主性を育むために,子ども同士が交流によって成長できる,新たな遊びの場,交流の場といった学習機会を提供する必要があります。
(1) 地域の実態調査の必要性
 これまでも,青少年を対象とした事業は,学校,地域,職場,各団体等において展開されていましたが,横のつながりによる連携や協力が十分にとれていたかどうか,子どもたちや保護者の考えが十分に反映されていたかどうか等省みる必要があります。
 例えば,県内の市町村ですでに行われているように,実態調査をもとに,家庭,学校,地域社会の役割等を明確にしていく必要があります。
(2) 子どもたちによる事業の企画・運営の必要性
 水戸地区のある市町村では,子どもたちが青少年活動に参加しない理由を,以前は「時間がない」「勉強が忙しい」と捉えていたそうです。しかし,実態は「やりたい活動がない」「どのような活動があるか知らなかった」という理由が60%でした。それまで行ってきた広報活動が誰のための活動だったのか,子どもの側に立ったものでなかったと反省させられたそうです。
 これまでの社会教育活動は,大人の視点による企画・運営が中心でした。そこで,市町村等で行われる青少年を対象にした事業については,企画の段階から子どもたちを入れて,意見を聞きながら施策づくりをして行く等の方向転換を迫られているのではないでしょうか。
(3) 中学生会の必要性・高校生会OBの活躍の場の必要性
 小学生には子供会があり,高校生には高校生会がありますが,中学生会はありません。中学校3年間は,子どもの成長にとって非常に重要な時期です。リーダー研修会等を実施することにより,中学生会を組織していくことも大切でしょう。
 また,高校生会を卒業したOBたちになかなか活躍の場がないという現状もあります。地域においては,高校生会のOBたちに,子ども会育成連合会指導員等として活躍の場を用意しているところもあります。また,将来的には,こうしたOBたちが,生涯にわたる地域のリーダーとして活躍することが期待できますので,活動の場の提供が望まれます。
(4) 子どもたちが活躍する場の必要性
 人間が生きていくためには,自己の存在を認めてもらえることが必要なので,地域の中に,子どもたちや,青少年の活躍できる場,また,活躍が目に見える場を作っていくことが必要です。
活 動 例
 ・中高生が企画運営する地域の夏祭り等の実施
 ・地域の子どもたちの情報誌の発行(幼稚園,小学校,保育所,中学校,コンビニ,病院,郵便局,銀行等に配布,
  町内会等の自治組織をとおして回覧配布)
 ・子どもたちの声の取材や,高校生の編集委員の起用
 ・青少年関係行事カレンダーを作成(事業の調整を行い,行事の重複を防ぐ)
 ・子どもたちの活躍の様子を市町村広報紙へ連載(掲載された青少年の通う学校へも送付,
  卒業してからもなお活躍している青年も広報)
 ・公民館や青少年教育施設において,小中学生を対象にした通学合宿等を実施し高校生ボランティアを
  指導者として活用
 ・学校の校庭等を利用したテント泊やキャンプ,体育館や余裕教室を利用した合宿等を実施し,
  上級生をリーダーとして活用することにより将来の指導者を育成
 ・中高生をリーダーとした研修旅行等の実施
 ・子どもフォーラム等の開催

2 親が家庭教育を学べる社会教育プラン(親の教育力の再生)
 家庭教育においては,親(保護者)がその重要性を認識することが最も重要です。そのために,県や市町村は,できるだけ早い段階から,様々な場面をとらえて,家庭教育を担うことができる親(保護者)になるための学習機会,つまり「親育ち」のための学習機会を提供することが必要です。
 子どもにとって家庭は,生きていくための力を身につける子育ちの場となりますが,親にとっても,子育てをとおして人間的な成長を遂げていく親育ちの場となります。そして,その成長が家庭の教育力の向上につながっていくのだと考えます。
 そのためには,母親,父親,祖父母,これから親となる若者,地域住民等に対する学習機会を提供する必要があります。
 また,子どもたちが,母親,父親,祖父母,近隣の大人たちなど,豊かな経験と知恵を有する様々な人々に囲まれて成長して行くことができる,開かれた家庭環境をつくっていくことが大切です。
(1) 家庭教育の重要性の啓発
 本県では,青少年を健やかに育成するために家庭の果たす役割が大きいことから,家庭の話し合い,団らんなどをとおして家庭生活の向上を図ることを基本方針として,昭和40年から毎月第3日曜日が「家庭の日」と定められています。青少年育成茨城県民会議では,家庭の日カレンダーを作成したり,機関紙や県民手帳に載せてPRを図っています。
 今後,他部局,自治体,関係団体,企業等と連携して広報活動に努め,家庭の日の存在をPRするなどして,その周知徹底を図り,茨城県全体として家庭教育の重要性を認識できるような啓発活動等を展開していくことが望まれます。また,家庭のあり方や家庭教育について考えるキャンペーンを実施したり,県生涯学習センターや青少年教育施設,市町村の公民館等で家庭の日にちなんだ事業を一斉に展開することにより,県民の家庭教育への関心を高めることが可能になると考えます。さらに,PTAを通じた家庭教育の重要性の啓発,県や市町村における広報紙の利用等も有効です。
 また,NHKでは地上デジタル放送による茨城県での県域放送を,平成16年10月に,開始する予定です。県域放送が開始されると,現在1日平均11分程度の放送である本県の地域情報が,2時間ないし3時間と飛躍的に多くの時間で放送されることになります。今後は,テレビ放送を活用した広報活動も考えられます。
(2) 学習機会の提供
①母親への学習機会の提供
 県や市町村は,生涯学習体系の中に家庭教育をしっかりと位置づけ,子どもの成長に合わせて家庭教育に必要な知識や経験を身につけることができるように,学習機会の提供や情報の提供を行うことが必要です。
 その際に,以下のようなことに留意する必要があります。

ア 託児付の事業の充実
 本県が生涯学習センター等で実施している県民大学も講座によっては,センターに登録している生涯学習ボランティアを活用して,3歳から就学前の子どもを対象とした託児を行っています。市町村が実施する家庭教育学級等でも,託児付の講座を増やしていく必要があります。今後はさらに,0歳児からの託児付の事業を充実させる必要があります。また,保育園,幼稚園,小中学校のPTAの集まり等でも,託児付の行事を考えていくことが望まれます。さらに,地域通貨(エコマネー)を活用して一時的な託児サービスが受けられるようなシステムの活用も考えられます。
 厚生労働省は,高齢者に仕事を提供するシルバー人材センターを活用し,退職した元教員や元保育士等が子育てを支援する新たな取り組みを平成15年度から実施する方針を決めました。子どもを預かって世話をすることにより,子どもと高齢者との触れ合いの機会となるほか,高齢者の就業拡大にもつながります。共働き世帯や核家族が増加する現在,親の目が子どもに十分届かなかったり,子どもと高齢者が触れ合う機会が減少したりしています。また,一方で高齢化の進展とともに,退職した後も「やりがい」や「生きがい」を求める元気な高齢者が増えています。両者を結びつけることは,子育て支援と高齢者支援の一助になります。具体的には,シルバー人材センターが利用者の注文を受け,同センターに登録された元教員や元保育士の高齢者に仕事を提供します。仕事の提供を受けた高齢者は,学校や家庭で幼児から小学生までの子どもを預かり,利用者は,センターに料金を支払います。

託児室 
託児室
(茨城県県西生涯学習センター)

イ 早い段階から様々な場面をとらえての学習機会の提供
 親(保護者)を対象に家庭教育学級等を実施する場合は,親自らが学ぶ意欲を持てるよう工夫し,基本的な生活習慣,規範意識,倫理観などを親自身が子どもに対して明確に教えられるようにする必要があります。また,子育てに関する研修会は,専門医や福祉機関と連携を図りながら実施することが大切です。
 そして,できるだけ早い段階から様々な場面をとらえて,子どもの発達段階にわせた学習機会を提供することが望まれます。

②父親の家庭教育参加の促進,父親への学習機会の提供
 日本は,諸外国と比較して家庭における父親の存在感が薄いことが指摘されています。母親だけに子育ての責任がゆだねられ,父親の理解や協力がないために,母親の子育てに対する不安感や負担感が増したり,母と子の関係が密着しすぎたりすることにつながる心配もあります。
父親がもっと家庭の中での役割を積極的に担い,夫婦でしつけについてよく話しあって,一貫した方針を持ちつつ,協力して子育てをしていくことが大切です。
そこで,父親の家庭教育への参加を促進し,父親の家庭教育における役割の重要性を啓発するため,県や市町村は,企業や公民館,幼稚園・保育園(所)等と連携・協力して父親のための学習機会を充実させることが必要です。

ア 早い段階から様々な場面をとらえての学習機会の提供
 父親の家庭教育における役割の重要性を啓発するため,できるだけ早い段階から様々な場面をとらえて学習機会を
 提供する必要があります。
イ 父親が参加しやすい事業の工夫
 働く父親でも参加しやすいように,夜間の講座や土日の事業を計画する等の
 工夫をする必要があります。また,幼稚園や保育園(所),学校においては,
 父親参観日等父親を 対象にした行事を設けたり,「親父の会」等を組織する
 などの取組も考えられます。

(3) 触れ合いの創出
 現在は,親同士の交流も子ども同士の交流も,社会全体として希薄になっている傾向があります。
 そのような中で,ほんの些細なことで,どうしたらいいか分からないという人が増加しています。
 特に,幼稚園に入る前の3歳未満の子どもを持つ親は,親同士の交流や子ども同士の交流が少なく,
 孤独な子育てをしている人がかなり存在しています。開かれた家庭環境をつくり,子育て期の母親に不足しがちな
 コミュニケーションを充実させるための様々な触れ合いを創出する工夫が望まれます。
①親子の触れ合い
 家庭教育を通じて子どもが生きる力を身につけることができるよう,親子で参加できる新しい学習機会の提供を図ることが望まれます。その際,子どもの年齢によって,発達段階に合わせた親子の触れ合い活動を展開していく必要があります。
 また,父親が参加しやすい事業を計画していくことも大切です。
ア 0~2歳
 乳児期の子どもは,家族に依存し何でもやってもらう生活を送ります。徐々に感覚や運動能力が発達し,保護者との基本的な信頼関係を結ぶ大切な時期と言えます。
 また,子どもは1歳前後に絵本に興味を示し始めます。絵本は,人生のうちで初めて出会う本です。子どもが本好きになるように,最高のものを与えられるようにする必要があります。
イ 3~7歳
 幼稚園から小学校低学年までは,言語の獲得や基礎体力,自律性が身に付く期間です。特に,3歳児は自立心が芽生え,好奇心がぐんぐん育ち,人間関係を始め子どもの世界がぐっと広がります。乳児期から幼児期への扉を開けようとする時期で,親を中心にした応答的な環境が最も必要とされる時期でもあります。
ウ 8~12歳
 小学校高学年になると,本格的な思考の準備の時期にさしかかり,知的技能や協調性が発達してきます。

②子育て仲間との触れ合い
 市町村は,NPOや育児サークル等と連携し,公民館や児童館など身近な場所で同じくらいの子どもを持つ子育て仲間同士の交流の場や機会を提供することが大切です。特に,幼稚園に入る前の3歳未満の子どもを持つ親は,親同士の交流や子ども同士の交流が少ないので,貴重なコミュニケーションの場となります。
 また,このような触れ合いの機会は,情報交換の場としても大きな役割を果たします。
 小学校区単位で公民館や余裕教室,コミュニティセンター等を利用して,地域に住む親子が日常的に集うことができる身近な地域の活動拠点,子どもと一緒に安心して楽しむことができる場所を整備することが必要です。
③地域住民との触れ合い
 地域住民と親子が一緒に触れ合うことができる活動を企画することが大切です。地域には,様々な分野で活躍する人々が存在します。そのような人々を講師に招いて,身近な公民館やコミュニティセンター,学校等で親子参加型のイベントを開催したり,地域の高齢者から昔の遊びを教えてもらう等の活動が考えられます。
 また,高齢者と親子が触れ合うことにより,子どもに思いやりの心が育ったり,親に高齢者の豊富な子育てに関する知識が伝わったりします。
活 動 例
 ・成人式や婚姻届け等の機会における啓発活動          
 ・婚前学級
 ・マタニティ教室や妊娠中の女性と家族を対象にしたマタニティ演奏会
 ・産婦人科での受診の際や母子健康手帳交付時,1歳半検診時,3歳検診時等を活用した,
  福祉・教育両面からの子育て講座
 ・就学時健診や入学説明会で家庭教育手帳等を活用した家庭教育講座
 ・思春期の子どもを持つ親を対象とした思春期セミナー
 ・父親の家庭教育における役割の重要性を啓発するための講演会の実施 
 ・父親学級の開催        
 ・子どもの職場見学
 ・シンポジウムの開催
 ・企業等への出前講座の実施
 ・企業における家庭教育講座の開設
 ・絵本の選び方及び読み聞かせに関するイベントの開催
 ・ブックスタート運動を展開し,同時に子育てサークルなどの資料も配布
 ・本の読み聞かせに関するイベントの開催
 ・親子で楽しむ英語遊び,料理教室,パソコン教室等の講座の実施
 ・親子参加型のイベント(テント泊,ふれあいの船)の実施
 ・リトミックや体操,野外活動等の実施
 ・2世代体験活動や3世代交流活動等の実施
 ・2世代体験活動や3世代交流活動等の実施
 ・高校生や大学生の育児ボランティアの育成
   
(4) 家庭教育支援情報システムの構築
 茨城県内のインターネット世帯普及率は,平成14年9月現在46.6%(全国平均49.9%)ですが,県では平成18年3月には90%になることを数値目標としています。このように,インターネットが一般家庭に急速に普及していく中で,誰もがいつでも容易に必要な情報を得ることができる「家庭教育支援情報システム」(以下「情報システム」という。)の構築が求められます。
 なお,情報システムの整備に当たっては,可能な限り広く情報を収集して地域に密着した子育て情報を掲載することが大切です。
 しかし,特定の団体の誹謗中傷,政治や宗教への利用等不適切な利用の可能性があると判断される場合には,管理者で情報を削除する等のルールを決めておくことが必要です。
 さらに,将来的には,県及び市町村を通じて,家庭教育に関する各種情報をデータベース化し,子どもの年齢,親子などの参加形態,託児の有無,地域等により参加し得る活動が検索できるシステムへ発展させていくことが求められます。
活 動 例
 ・地域の活動団体(子育て支援サークル,NPOなど)に関する情報,活動プログラムに関する情報,
  イベント情報等の紹介,指導者募集や参加者募集等の広報を行うためのホームページの開設
 ・各地域での,草の根の子育て支援の取組等の紹介
 ・仲間づくり,ネットワークづくりなど,地域の取組の紹介パソコン
 ・児童館等で定期的に行われている「子育てサロン」等の内容や様子の紹介
 ・子育てボランティアの活動やボランティアを育成する講習会の紹介
 ・親子で利用できる市内の公園や文化施設の一覧等の紹介
  ・各市町村のホームページ,関係機関,関係団体等の情報を含め,これらを利用しやすい
  体系に整理してリンクを張るなど,家庭教育に関連する情報を総覧できるシステムの構築

(5) 家庭教育相談事業の充実
核家族化と少子化が進む現在,子育てに不安を持ち悩みを抱えながらも,誰にも相談できないでいる
親が増えています(図1)。
また,子育てに関する様々な情報に振り回され,自分の子育てに自信が持てずに心に余裕がない
状態で不安を抱えている親も多くいます(図2,図3)。


 図1「母親の『子育て』に関するアンケート調査」
 (平成14年1月~11月実施)


 図2「母親の『子育て』に関するアンケート調査」(平成14年1月~11月実施)


 図3「母親の『子育て』に関するアンケート調査」(平成14年1月~11月実施)

 県では,教育・子育て電話相談事業を行い,幼児,児童生徒を持つ保護者からの,教育や子育てに関する幅広い内容の相談に,24時間体制(FAX及び電子メール終日,相談員による相談9:00~24:00)で対応しています。また,寄せられた相談のうち,専門性を生かした対応が必要な事例に対しては,家庭教育特別相談員が電話や面接によるカウンセリングを行っています。 
 今後もさらに広報活動を行いながら,相談事業の充実を図っていくことが必要です。特に,若い世代の母親はインターネットやメールを利用してコミュニケーションを図る傾向があるので,インターネットやメールを利用した相談活動の充実を図り,相談に対して迅速に回答できる体制を確立していくことが大切です。
 また,身近な地域における家庭教育に関する相談員の養成・研修を行いながら,子育てに対する不安を感じる親がいつでも気軽に悩みを相談できるような体制を整備し,その支援体制が全市町村に広がることが望まれます。
 県では,市町村等における相談員の資質の向上を図るため電話相談専門研修会を実施していますが,さらに気軽に相談に行ける場所やそのための人材の養成・研修等の充実を図ることが必要です。また,保護者の悩みに対して,専門のカウンセラー等を紹介する支援体制や専門相談員が地域の児童館や集会所等に出向いて子育ての悩みや相談に応じる体制の整備も大切です。 
子ども放課後・週末活動等支援事業
(常陸太田市立世谷小学校)

(6) 企業の役割
 働く親(保護者)が,家庭において十分な教育を行うには,職場の理解と協力が不可欠です(図4)。子どもを持つ女性は,家事・育児等家庭生活の多くの負担を負っている現状にありす。特に働く女性にとってはそれが大きな負担となっているため,男女が仕事と家事・育児等を両立できるように,企業は多様な勤務形態を可能にする等の条件整備が必要です。


 図4「母親の『子育て』に関するアンケート調査」(平成14年1月~11月実施)

 一生懸命に仕事に取り組み,社会に貢献する親の後ろ姿は,子どもにとって大きな教育効果を持つものですが,家庭や地域で過ごす時間もまた大切です。企業は,社員の家庭生活と職業生活の両立を支援するため,労働時間短縮の促進や育児休業制度の定着促進等を図るなどして,家庭教育充実のための環境づくりを推進し,積極的に支援する必要があります。生活の中心が,地域から職域へと変化している現状の中で,職域が地域を補完して教育機能を担う取り組みが求められます。県としては,社員の地域社会における貢献を奨励することや,企業内研修会等の開催を企業の経営者等に対して働きかける必要があります。
活 動 例
 ・地域における相談員(家庭教育相談員や家庭教育サポーター等)の養成・研修とその活用
 ・身近な相談員としての教員,保育士の活用とその研修
 ・保育所や幼稚園,小中学校における親(保護者)に必要な家庭教育情報の提供及び相談活動の充実
 ・校務分掌に家庭教育担当職員を明示
 ・学校等に家庭教育相談員を配置
 ・職場における,家庭教育や地域活動の重要性の啓発
 ・企業等が地域社会の一員として地域の教育活動に参加

3 地域住民が家庭教育を支援する社会教育プラン(地域の教育力の再生)
 家庭の教育力は昔と比べてそれほど変わらない,変わったのは地域の教育力であるという考え方も存在します。産業化や都市化の進展に伴い,居住地と離れた場所へ通勤する人が増加し,多くの人々の生活の中心が地域から職場へ移っていきました。かつて生活に不可欠であった農作業等の共同作業が次第に減少し,地域への帰属意識も薄くなっていきました。
 少子高齢化や都市化,核家族化に伴って,地域社会における生活の在り方が大きく変化した結果,家庭と地域の関係が希薄になり地域の教育力が低下したと考えられます。それに伴って,家庭の教育力に依存しなければならないことが増えてきました。にもかかわらず,家庭の教育力自体も急激な向上が望めない状況にあります。
 そこで,かつて地域社会が持っていた教育力を再生し,家庭教育を支援していくことが大切であると考えます。しかし,地域自体を完全に昔の形に戻すことは不可能ですから,昔の地域コミュニティの機能を再生する努力を継続すると同時に,それぞれの地域に合った新しい地域コミュニティの創造が求められます。そして,地域に開かれた家庭に,地域の教育力を注入することにより,家庭の教育力も向上するものと考えられます。
(1) 「たまり場」と交流の必要性
子育て中の母親のコミュニケーションの量を増やすには,いつも必ず誰かがいて,気軽に立ち寄れて,一緒に語り合える,コミュニティーの場づくりが必要です。地域に住むもの同士が子どもを通じて知り合ったり,語り合ったりできる自由な空間を,公民館やコミュニティセンター,学校の余裕教室等を利用して,地域住民が自分たちの手で作り上げることが望まれます(図5)。


図5「母親の『子育て』に関するアンケート調査」
(平成14年1月~11月実施)
   
 この際,単に人々の地縁的な結び付きによる活動だけでなく,同じ目的や興味・関心によって結びついた世代を超えた人々の活動が活発に展開され,子どもたちを育む場となることが必要です。
 また,地域住民は,PTA等を通じて,家庭教育の課題を地域の中で共有できるような環境整備努める必要があります。市町村は,地域のボランティアを育成し,そのリーダーを中心に子どもから高齢者まで幅広い層の参加を働きかける必要があります。

(2) 祖父母,近隣の大人たちへの学習機会の提供

 子どもたちが,母親,父親だけでなく,祖父母,近隣の大人たちなど,豊かな経験と知恵を有する様々な人々に囲まれて成長して行くことができる,開かれた家庭環境をつくっていくために,県や市町村は,祖父母,近隣の大人たちへの学習機会の提供を行うことが大切です。
ア 祖父母のための講座
 祖父母の世代が子育てをした時代と現代では,子育てをめぐる社会環境も子どもの様子も大きく変化しています。そこで,祖父母を対象とした孫育て講座(初孫講座)等を開催していくことが望まれます。
イ 近隣の大人たちへの講座
 子どもは「社会の宝」という意識を啓発し,親と子と家族全体が育っていくのを地域社会全体で支援していくために,近隣の大人たちへ家庭教育支援に関する講座等を開催していくことが重要です。
活 動 例
 ・PTA,社会教育団体,NPO等との新しい地域づくり
 ・市町村は,地域の公民館等を利用し通学合宿等を実施し,しつけや基本的生活習慣の定着など
  家庭教育の機能を補完
 ・町内会や子ども会等で行われる祭りや伝統行事,社会奉仕活動など,共同作業の中で地域の
  教育機能を再生
 ・市町村は公民館や学校が地域の拠点としての機能を最大限に発揮できるような体制を整備
子どもを健やかに育む環境整備 2021-12-20 [茨城県生涯学習審議会]
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