平成16年度 第3回茨城県社会教育委員会議

2021年12月20日 15時26分 [茨城県生涯学習審議会]
2004年6月28日
平成16年度 第3回茨城県社会教育委員会議
議事要旨


1 日時 平成16年6月28日(月) 午後1時30分~
2 場所 茨城県三の丸庁舎 3階大講座室
3 出席委員
   川上美智子議長,木村競副議長,伊佐治好美委員,大久保英紘委員,大野重男委員
   櫻井よう子委員,佐藤宏之委員,塩原慶子委員,栃木敏男委員,中川輝夫委員,沼尻直委員
   平塚知真子委員,深谷めぐみ委員
  事務局
   助川幹夫生涯学習課長,大曽根徹課長補佐(総括),他
4 審議テーマ
  「未来を切り拓く新たな社会教育の在り方について」
5 課題
  若者の自立支援~青少年の主体的な社会参加に向けて~
6 議事要旨

(議長)
では協議に入りたい。東京都の少子化は大変進んでおり,合計特殊出生率が 1.0を割り込んでしまった。結婚もしない,子供も産まないという若者がますます増えていくなかで,若者の自立支援をうまく進めていかないといけない。
本日は,前回御意見をいただいた二つの協議事項について,話し合いたい。一つは,「若者の自立支援~青少年の主体的な社会参加に向けて~」についてで,事務局から基本的な案についてまとめたものが出ている。二つ目はその他ということで,本日の議題は以上である。
まず,本日の主要なテーマである「若者の自立支援~青少年の主体的な社会参加に向けて~」について進めていきたい。
2月の会議では,若者の自立を社会教育からどのように支えていくかについて意見が出された。特に,仕事に就きたいが就けない若者の増加に対して,支援や就業についての意識付けを,社会教育からどうするかという観点から御討議いただいた。この協議の論点を振り返りつつ,事務局から国・県の施策,配付資料等についての説明を聞いていきたい。
(事務局)
本日の会議にあたり,お手元の資料についての御説明をさせていただきたい。なお,配付資料の一覧については,本日配付レジュメに,目次で示してあるので御参照願いたい。では,レジュメ5頁以下について説明させていただく。
まず5頁目の「たたき台案」に関しては最後に触れようと思うので,前会議の協議内容である6頁から御覧いただきたい。
特に前回の会議においては,フリーター等に対する自立支援について御議論をいただき,若者の自立を社会教育からどう支えるかに関して次のような御指摘をいただいた。
現代の若者というのは,必要なスキルやノウハウを提供しないと自立できない現状にあるということ。あるいは,学校教育のなかでも職業教育等は行われているが,これまでの学校教育における職業教育あるいは進路指導では,勤労意欲の涵養には結び付かなかったのではないか,ということ。就学以前の段階で,家の中でお手伝いをさせること等を含めて子どもの役割を意識させることが大事であるということ。学校と地域社会が連携してボランティア等の体験活動をさせることが必要であること。また,次回の会議から,フリーターへの就業支援に限定するのではなく,より広い社会教育の視点から,若者への自立支援を検討していこうと御意見をいただいた。
7頁目は,本県における若者の支援策の概要を模式図的に示した資料である。
続いて8頁は,茨城教育プラン実施計画の今年度版である。9頁には全体の目次が示してあり,10頁目には進路指導の充実策として,中学生社会体験事業やあるいは高校等に関する就職・進路指導関係の事業がいくつか列記されている。
11頁については,職業教育の充実という観点から,学校と企業との交流推進事業をはじめとして,職業教育指導者研修等,あるいは高校生起業家教育プラグラム等々,今年度実施している本県教育委員会の事業について示している。
12頁以降は参考資料としてつけたものである。資料1は,中央教育審議会の生涯学習分科会から今年の3月29日付けで総会へ報告された,いわゆる審議経過の報告の一部である。
20頁からの資料2は,前回の会議の時に国の動向の資料として若者の自立挑戦プランといったものを御覧頂いたが,そのなかでも専修学校を活用した若者の自立挑戦支援事業ということで,文部科学省で平成16年度の事業として実施するものである。
23, 24頁に関しても,国で行っている専修学校を活用した若者自立挑戦プランの概要を模式的にいくつか示してある。
25頁の資料3に関しては,議長から実際の事業展開についての情報提供をいただいた,ヤングあきんど育成支援事業(日立地区で実施)についてのものである。高校生と茨城キリスト教大学の学生が参加した商店経営体験の場で,『ヤングあきんどカウッパ』の開店ということで情報をいただいたものである。
次の26頁・資料4に関しても議長に御提供いただいた。学生教育ボランティア支援事業という日立市で実施されている事業の要項等を添付したものである。日立市と茨城キリスト教大学が連携を図っている事業で,茨城キリスト教大学の学生が日立市内の小・中学校等の教育活動にボランティアで参加して,様々な活動を行っていくものである。
36頁目は,「6月28日第3回社会教育委員会議準備メモ」ということで副議長から御提供いただいた。これまでの議論等を踏まえて,第3回はこう議論を進めたらどうかという御提案を整理していただいたものである。基本的な考え方以下,家庭,学校,社会教育との関係あるいは社会教育の対象と担い手ということ(「誰が誰に」),今後具体的なプランを立てる場合にどのような事を考えていくべきなのかという観点に基づいて整理いただいた。
38頁からの資料6は,委員から御提供いただいた。「子どもに学ぶ・子どもと育つ」子どもによる子育て支援の事例ということで,広島県で行われているNPO法人子ども劇場広島県センターでの様々な取り組みを紹介したものである。十代の子どもたち自身が,小さい子どもの託児をはじめとする様々な事業に関わっている事例の資料である。
44頁からの資料7「若者の自立支援システムをヨーロッパに見る」は,千葉大学教育学部教授宮本みち子氏の論文を採ったものである。
49頁からの資料8は,若者の自立挑戦プランについて,東京経済大学の方と文部科学省教育開発センターの方の対談である。
1番の「たたき台案」にお戻り願いたい。前回までの会議での御意見等を踏まえて,たたき台案として事務局側でまとめたものを示したものである。特に今回については若者の自立支援,青少年の主体的社会参加に向けてということで,前回の議論ではフリーターへの対応を中心に御意見いただいたが,社会教育の視点からという御意見もあり,今回のようなくくりにさせていただいた。理念の具現化のためのガイドラインとしてどういった観点で整理していくか,そのガイドラインを元にした具体的な提言化といったことで整理したものである。
テーマ設定の理念としては,青少年の健全育成が今世紀の日本における社会全体の課題であるということ。更に青少年の社会的自立が不可欠であり,そのために青少年自身の自己実現を目指した職業観の確立が必要であるということ。青少年が真の個性を形成するためには家庭,学校,地域社会がそれぞれの役割を自覚し協力していくことが必要であるということを理念として掲げた。
その理念に対してどうアウトラインを形作っていくのかということで,家庭,学校,地域社会,学社連携,社会教育といったものをいくつか提示し,そのなかで具体的にどのようなことができるのか整理した。家庭では,社会の規則や家庭での役割を子どもに自覚させること。学校では,集団のなかでの自分の役割あるいは連帯感などを獲得させ,更に職業観の意識付けを行う。地域社会においては,子ども会活動やNPO等の活動のなかで,ボランティア等の奉仕活動・体験活動を通して子ども自身の社会性の向上を図ると共に,働くことの喜び,意義を学ばせる。学社連携の観点からは,連携してのインターンシップ(職業体験),職場見学等の職業教育を行い,就業のための意識付けを行っていく。社会教育としては,公民館・生涯学習センター等を活用したキャリア教育の実践をすることによって,リカレント教育を行う。以上を案として整理した。
前述したことを受けて具体的にどういった案が考えられるのか,それぞれいくつか挙げてみた。一つには,公民館・生涯学習センター等を活用した若者の自立支援。二つめは学社連携による青少年の自立支援,社会における活動の場づくり。こうしたことを根底に置いて具体的なものに結びつけていってはどうか,ということで示させていただいた。
以上が本日の資料についての説明である。
(議長)
事務局からの資料説明だったが,資料5について副議長に補足説明願いたい。
(副議長)
準備メモとして,これまでの2回の議論を整理させていただいたのが,1~3である。これから提言をまとめるにあたり,こうしたところに注意したら良いのではないかというものが4であるとお考え願いたい。
まず最初に,これまでの委員の方々の様々な意見を整理するということで考えてみた。
社会教育というものが学校教育や家庭教育とは違うということを考えてみると,学校教育がどうしても座学になりがちであるために,社会教育はそうでない形が望ましいという御意見もあった。実際の社会活動の中で教育活動が行われているところが,社会教育でしかできないことであり,特徴ではなかろうか。「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」というのは企業などで実際に仕事に従事しながら熟練させていくというもので,若干ニュアンスは異なるかもしれないが,実際の仕事をやりながらというところ,社会教育に参加することが社会参加でもあるというところが,社会教育ならではの特色であると考え,冒頭に挙げた。
皆様から紹介いただいた様々な具体的好例をまとめてみると,それに参加した若者にしても子どもにしても,それを機に自信を持ち,しっかりとしていくようだ。主体性と責任意識の形成というと語は堅いが,そうしたことを経て社会人になっていくということはポイントの一つであろう。この後の資料6で委員が紹介して下さった事例も,子どもが自分から参加することによって主体性と責任意識を持っていく好例ではなかろうか。また,「参加」ではなく「参画」という表現を用いた方が良いかと思う。それを細かく考えてみると,「正のスパイラル」という表現をしたが,良い方に回っていくことで,上のステージに上がって行くという図式が参加・参画のなかでうまく働くことによって,主体性・責任感の形成が行われていくのではないか。
2番の家庭,学校,社会教育との関係についてだが,(1) の協力関係ということに関しては御異論はないだろうと思う。(2) のところは前回の会議で,家庭の教育力ということで意見を申し上げ,御批判をいただいた部分であるが,自分自身,真に言いたいことが伝えきれなかった。一番に言いたかったことは,家庭や学校では前述した「正のスパイラル」にうまく入れない場合があり,その補完関係として社会教育のなかで自立・自己形成の道が拓けるならば,それこそ社会教育ならではのことであるので,協力関係と補完関係という言葉を用いた。
次頁を御覧いただきたい。「若者」への焦点化ということに関しては前回までのことであり,「大人」がモデルとなるということも当然かと思う。(4) で用いた「ピア・エデュケーション」という言葉は,同じ様な立場の者同士でのピア・カウンセリングなどというように,近年使われるようになっている。私の大学でも,卒業したばかりの学生に,就職活動の内容や現在の仕事のことなどを現役の学生と話させる機会を設けているが,教員からの話とは受け止め方が全く違う。自分たちとほとんど年齢の変わらない,同じ様な経験をしている仲間同士の教育力が発揮できれば,これも社会教育ならではの事ではないかと考え,挙げさせていただいた。(4)の具体的なプランということで(2)の部分を提言したい。社会教育に何が必要かというと,先程から述べられているように,若者の就職率の向上など社会の側のニーズがある。しかし,それをどう実現していくかということはストレートには出てこない。一方,若者側のニーズはどうかというと,もし仮にそういった要望がはっきりあるならば若者から声が挙がっているはずであり,そもそも若者自身に自分が何をしたいか,何を望むのか自覚させるところから始めなくてはならないところに難しさがある。そこで,発想を転換し,各委員から御紹介があったように茨城各地で充実した活動がなされていることに注目したい。茨城県の様々な条件の中で成功した例を参考に,一般化し応用する形でプランを立てたり,参考例として提供したりすることが有効なのではないか。そういった事例を集めるにあたっては,各委員から御紹介いただいたり,行政のルートから集めるほか,それに加えて何か良い案があるのではないか模索中である。
(議長)
事務局から説明があった内容を土台に,委員の皆様から御意見・御提言をいただきたい。本日はたたき台が示されているので,それと結びつけてお話しいただきたい。
資料3と4で紹介した茨城キリスト教大学の取組は,今年新たに始めた試みでまだ成功例とまでは言えないが,大学でもこのような取組を考えているということの一例として挙げた。御意見等あればお聞かせ願いたい。
まず,たたき台について,このような筋で良いかということも含め,お話しいただきたい。
(委員)
たたき台のテーマ設定の理念について,職業観の確立ということで職業観に焦点が当てられているが,職業のみならず人間の生き方・人生観につながることであり,自分がどう生きるかを考えさせることが必要であると考える。問題はやる気のある若者ではなく,自分からは何も活動しようとしない若者であって,二方向からのアプローチが必要になるのではないか。自分で能力を身に付けたいがそのような場が見つからない場合と,自分から積極的には全く動かない場合とがある。高校の現場で,就職を希望する生徒等の面接を行うが,一切就職活動をしない生徒が必ずいる。従って就職内定率 100%にはならない。こうした活動を行わない生徒に対して,どういった働きかけをしていくかが学校現場としては大きな問題だと考えている。保護者を交えて話をしても,保護者側に問題があり事態は動かない。「何とかなるだろう」という保護者の姿勢があり,保護者が一生懸命にならない限り生徒たちも動かないという,まさしく副議長のおっしゃるところの「負のスパイラル」ともいうべき状態にあるように感じる。こうしたことからも職業観だけでなく,「どう生きるか」ということを小学校時代から少しずつ考えさせていく必要がある。ただし,小・中学校と高校では状況が違うとも思う。小・中学校では学校や周囲が全部用意したなかでしか動いておらず,そういった経験しかしたことのない生徒に対し,高校で「自分で考えなさい」「自分で責任を持ちなさい」と言ってもまず動けない。そこでまた周囲が準備をした中に子どもたちを入れてしまい,結局自立が出来ない状況を作ってしまうという繰り返しのような気がする。よって,ガイドラインとして考えられていることのなかで,職業観の意識付けを行うということだけでなく,「いかに生きるか」を考えさせることが大切である。一人で生きて行かなくてはならないということがわかれば,自ずと職業観も身に付くのではないか。そういったなかで,学社連携でできることとは何かということで,インターンシップが行われている。現在,高校で行われているインターンシップは就職希望者全員を対象とする方向だが,これでは不完全なのではないか。進学希望者を含めた全員を対象にしなければ,真の職業観を含めた人生プランを持たせるまでに至らないのではないか。高校,特に進学校では,生徒に対しアルバイトを禁止している学校があるが,私自身はアルバイトを積極的にやらせても良いのではないかと考える。実際,社会体験的なことをして,自分でお金を稼ぐことの大変さを身をもって体験しなければ,職業観にしても人生観にしても実際には身に付かないのではなかろうか。提言化にあたっては,出来ることと出来ないことがあると思うが,これまでの学校教育において,今まで生徒の意見等をあまりに聞きすぎたきらいがある。強制力を持つことは難しいことだが,時には強制的に無理矢理やらせるということも必要ではなかろうか。奉仕活動等にも言えることだが,我慢することを学校または社会全体で教えることが必要だ,ということを盛り込めれば良いのではないかと考える。
(議長)
大変本質的な御意見だったと思う。大学に入ってからは自由だということで,いざ自分で何かやりなさいと言われても,それまでにマニュアルで動いてきているためできない学生が増えてきている。やる気というものを小さい頃から持たせる教育の在り方が必要なのだろうと思う。
御指摘のように5頁では,「職業」について相当大きく書かれている。若者が一人で生きていくためには,経済的な自立が不可欠ということで「職業」が特に大きく扱われているが,「どう生きるか」ということにもう少し広げて考えたらどうか,という御意見だった。そのあたりを少し広げた形のものにしていきたいと思う。
平成16年度 第3回茨城県社会教育委員会議 2021-12-20 [茨城県生涯学習審議会]
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2021-12-20 [茨城県生涯学習審議会]
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