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「社会参画をささえる生涯学習推進方策について」

2021年12月20日 15時26分 [茨城県生涯学習審議会]
2002年6月27日
「社会参画をささえる生涯学習推進方策について

~ 心豊かな地域づくりのために~」(報告)

平成14年6月27日茨城県生涯学習審議会

はじめに

第5期審議会は,飛躍的な科学技術の進歩,少子・高齢化等に代表される社会変化を踏まえ,生活の向上,職業上の能力の向上や自己実現,人権の尊重,男女共同参画社会の形成などのため生涯にわたって,いつでも自由に学習の機会を選択して学び,その成果が適切に評価され,生かされる生涯学習社会の実現を目指し,社会参画をささえる生涯学習推進方策について審議し,特に「心豊かな地域社会づくり」に結びつくよう支援することをテーマとしました。
本審議会では,こうした社会変化を踏まえると同時に学習者の多岐にわたるニーズに応えられるようにするにはどうあるべきか,ということについても考えました。例えば,高齢者世代の増加を受けて,高齢者対象の講座を増やすことがただちに高齢者の学習ニーズを満たし得るのか,どうかということです。高齢者が増えるということは多様化も進むということです。多世代の住民と共同活動を望む場合もあれば,学びたい内容もさまざまでしょう。場所だけを確保し活動内容を自分たちで決めて実施したいグループも出てくることでしょう。そこで,学習した成果を生かして社会へ参画していくためにはどのような支援が必要か,今後の生涯学習の推進方策について審議しました。
特に,第1章では,団体や個人の自主的な学習活動の活性化を図るためには,多岐にわたる学習ニーズに応える学習情報の提供と相談体制,広域的な連携とネットワークの構築の必要性について,第2章では,学習した成果を生かした社会参画のための学習機会の整備について提案します。
この報告書をもとに,社会参画をささえる生涯学習推進のための諸施策を計画的に実施し,市町村,大学等高等教育機関,民間教育事業者等の相互の連携を図りながら,県民の生涯学習が一層推進されることを期待します。


第1章 地域における各団体・個人の自主的な学習活動の活性化を図るための支援方策について
1 学習情報の提供及び相談体制の充実
<現状と課題>

(1) 本県では,生涯学習情報提供システムを全市町村の132機関に設置し(平成14年3月現在),その充実を図っていますが,情報の更新や新たな情報の提供がさらに望まれています。そのためには市町村,大学等高等教育機関,民間教育事業者の学習機会に関する情報収集を図り,より新しく幅広い情報を提供する必要があります。また,生涯学習に関する啓発のために生涯学習情報紙の発行等も行っています。情報提供の手段として,インターネット等の新しい通信手段による情報提供のみでなく従来の方法での情報提供にも需要があることに留意すべきです。
(2) 学習相談事業として各生涯学習センターに生涯学習相談員を配置し,来所,電話等による生涯学習に関する学習相談を実施しています。しかし,学習相談事業が必ずしも十分に知れわたっているとはいえず,この事業を広く知らせることが望まれます。また,学習相談が県民にとってより親しみやすく,利便性があるものになるために,生涯学習相談員の資質の向上が求められています。
 
<提案事項>
(1) 地域において各団体・個人が主体的に学習機会を選択していくために,学習情報提供の果たす役割は大きく,その充実を図る必要性は改めて述べるまでもありません。そして本県の生涯学習情報提供システムの情報の更新等の充実を図るためには,今後,情報提供技能に専門性を有する人材や情報の発掘,収集を行うことのできる人材,モニター等を登録し,企画の段階から学習者の参加を求めるシステムを検討する必要があります。そのようなシステムによって,現在のシステムをさらに県民にとって使いやすいものにすることが期待されます。
(2) 情報の充実を図るためには,市町村,大学等高等教育機関及び民間教育事業者の生涯学習情報提供の担当者による連絡会議を年2回程度開催し,情報提供の方法・内容についての情報や意見の交換を行うことにより,県民のニーズに応じた新たな情報を常時提供等できる体制を整備することです。
(3) 団体・個人が主体的に学習を進める上で生涯学習相談は不可欠なものといえます。今後は,多様化,高度化した学習要求,学習内容に応じて相談内容もますます幅広くなると思われます。そのため,生涯学習相談員のさらなる資質向上を図るために,生涯学習相談員同士の連携,協力が求められると同時に,外部指導者を講師とする研修を積極的に実施することが必要です。その際には,生涯学習相談員が企画段階から参加することが重要です。
(4) 生涯学習相談をより専門的なものとするためには,大学等で生涯学習を専門に学んだ人を生涯学習相談員として配置することが有効です。また,生涯学習相談をより身近なものとするために,様々な年齢層の相談員の配置や,地域で生涯学習活動に携わってきた人の配置が必要となります。


2 学校等教育施設の開放,生涯学習関連施設の活用
<現状と課題>
(1) 本県では地域に開かれた学校づくりを推進するために,県立学校開放講座の開設や体育館,音楽室,プレールームなどの開放を行っていますが,一部の施設開放に限られており十分に開放が行われているとはいえないのが現状です。今後は,地域社会の身近な小・中学校においても開かれた学校づくりを推進し,より多くの学習機会を提供することができるように整備を進める必要があります。
(2) 学校施設だけでなく,生涯学習推進センター等の地域の生涯学習関連施設を,地域の人々の多様な学習活動の機会や地域活動の拠点とすることが望まれています。また,県民が安心して学習できるように現場の整備についても併せて求められています。
(3) 学校と地域の生涯学習関連施設等の連携については,一部学社融合の事業を進めるなどして協力が図られてきましたが,順調に推進されている状況にないのが現状です。今後は,学校及び地域の生涯学習関係施設が持つそれぞれの特性を活用し,人的,物的な財産を互いに共有して,地域社会において学社融合が積極的に進められるための検討が求められます。
 
<提案事項>

(1) 生涯学習施設の新設については,かねてから要望の強い県北地区に生涯学習センターを開設して,県を5つのブロックに整理し,そこを拠点とした生涯学習の推進を強力に展開することが重要です。また,それと同時に,地域にある様々な公的及び民間施設等の活用と機能の付与が望まれます。そのために必要なことは,それらの諸施設の新たな活用方法を開発し提案していくこと,また,広く県民の意見,感想を求め反映させることです。
(2) 学校開放にあたっては,治安面での不安や学校の負担増を危惧する声があります。したがって,管理の手段や責任の所在などについての地域負担や機能付与の可能性を早急に検討し,その成果に基づいた先導試験的実施を試みる必要があります。
(3) 地域にある様々な公的及び民間施設等の活用については,小規模な単位で(例えば小学校区ごと),情報の受発信や地域の生涯学習団体,指導者の連絡機能を持つ生涯学習の拠点(サテライト)を,地域の支援のもとに開設することが考えられます。そのためには,サテライトの運営等に関する支援者(サポーター)を発掘,養成することです。



3 行政機関相互・市町村間の広域的な連携の促進
<現状と課題>

(1) 本県では平成9年度から現在まで(平成14年度事業終了),広域学習圏の生涯学習を推進するために,県生涯学習センター,教育事務所,市町村教育委員会の三者による連携事業を実施しています。今後はこの事業の成果を生かし,市町村間における積極的な連携事業を企画し実践していくことが求められます。
(2) 学習ニーズの多様化に伴い,市町村間の連携が求められています。生涯学習の推進のために,広域的な学習圏の構築をめざして市町村生涯学習関連事業連絡協議会等の設置が望まれており,現在その設置が進められています。今後,社会教育主事及び生涯学習担当者等の連携を一層促進する必要があります。
 
<提案事項>
(1) 生涯学習は人々の様々な生活の場面で行われるため,関連する業務は,県庁各部局にかかわっています。しかし,それぞれの分野でこれを支援して行うことには限界があり,より一層県民の学習ニーズに応える支援体制を確立するためには,県庁各部局間の連絡・調整・協力・協働機能を強化する必要があります。その方策として,
① 生涯学習の主管課等がコーディネートを行って新たな事業の開発,提案を行うこと。
② 県庁各部局が主催する生涯学習機会に関する情報を常に提供できる生涯学習情報提供システム等を構築すること。
③ 学習機会における成果の評価・認定を更に推進すること。
などが考えられます。
(2) 市町村間での連携事業を円滑に進めるために,県は連絡,調整を行うことが必要です。その際に,県は主に情報提供や連絡に重点を置いて調整を図ることが求められます。同時に,県には当該連携事業が他の市町村間の連携事業の参考となるような情報収集,資料等作成,市町村担当者への情報提供を行わなければならないでしょう。また,各市町村の地域の特性にもとづいた独自性をもつ事業を複数選び,県としての支援を行い,先導的な事業の啓発,普及に努めることが重要です。
(3) 市町村間,学校と地域の生涯学習関連施設間等での連携事業の計画にあたっては外部講師を招き,専門的知識,技能の提供を受ける必要があります。特に,事業終了時点で行う評価についての基準,方法などを検討し,新しい方法にもとづいた評価を実施することが必要です。



4 生涯学習推進のためのネットワークの構築
<現状と課題>

(1) 本県は,県の生涯学習関連施設間で事業の紹介や取り組み状況について情報交換を行うために生涯学習関連施設連絡会議(平成14年3月現在,32施設,年2回開催)を設置していますが,さらに民間教育事業者等との情報交換も必要となると考えられます。また,市町村の生涯学習関連施設間で連携・協力を進めるために,生涯学習施設担当者からなる市町村生涯学習施設連絡協議会を設置していますが,未設置の地域があり,その解消に努めなければなりません。
(2) 平成9年度に県西地区でモデル的に実施し,以来鹿行地区,県南地区,水戸地区,県北地区と各2年間にわたり学習圏振興事業を展開し,広域学習圏のネットワークを生かす,生涯学習推進のための生涯学習ネットワーカーの養成にも取り組んでいます。今後は,生涯学習ネットワーカーの活躍の場や機会に関する情報提供や活動への支援が求められます。
 
<提案事項>
(1) 現在行われている生涯学習ネットワーカーの研修内容の向上・改善を図っていくことが重要です。そのためには,さらに質の高い多くの生涯学習ネットワーカーの養成が行える研修体制を整備していく必要があり,受益者負担の視点から,研修者が費用の一部を負担して,研修者自身の技能の習熟を図っていくことが望ましいことです。その研修内容については,生涯学習ネットワーカーの意見,要望を反映させることや専門家の助言を受けることが不可欠です。
(2) 生涯学習ネットワークの構築にあたっては,ネットワーク参加機関,団体,個人にとってお互いの利益が尊重されなければなりません。そのためには,それぞれの独自性を生かしたネットワークの構築,維持のための新しい方式を検討する必要があります。



第2章 学習成果や活動経験などを生かした社会参画のための支援方策について
1 社会参画に向けた学習機会の整備(社会体験活動も含む)
<現状と課題>

(1) 学習活動を通じて身につけた知識や技能を,職場や地域社会の中で生かしたいと望んでいる人が増えています。また,さらに多種多様な学習を求める声もあがっています。行政がこれまで行ってきた施策の中心は学習機会の提供でしたが,これからは,そこで得た学習の成果をもとに,企画や立案の段階から学習者も加わり,参加体験を重視する事業の開発を展開しようと生涯学習の新たな一歩を踏み始めています。今後は,社会参加型(就労を含む)や問題解決型の学習機会の提供をより積極的に進めると同時に学習者が主体的に学習活動を展開できるための能力の養成をする必要があります。
(2) 平成13年度の実績では,県の主催講座が900,連携講座が631,合計1,531の講座が実施されました。それらは実施機関ごとに公開されていますが,それぞれの分野ごとに整理された情報提供が望まれています。
(3) 県北地区への生涯学習センターの設置は,県の生涯学習の推進において重要な課題です。現在は,水戸生涯学習センターがその機能を行っています。地域住民の学習ニーズを的確に把握し,地域の拠点として十分な活用が図られるよう検討していく必要があります。
 
<提案事項>
(1) 社会参画を推進するためには,地域住民の学習ニーズにかなった内容を持つ講座を用意することが重要です。そのためには,テーマ設定や講師の依頼は,住民の学習ニーズ,社会変化,社会からの要請等に照らして,常時検討する必要があります。その際,講座の企画や立案の段階から住民や学習者が協働することができるように支援し,学習者が参画できる社会的な仕組みの構築が必要不可欠です。
(2) 行政や高等教育機関等で多くの講座が実施されていますが,同一分野ごとにまとめた情報の提供がされると受け手にとって利便性が高くなります。学習機会の整備の一つとしてインターネット上で公開することを早急に進める必要がありますが,そのためには,現在のホームページを利用者の立場に立ってアクセスしやすいように配慮し,情報量をさらに拡大していく必要があります。
(3) 講座は通信制大学院の設置を展望する時代に入っています。ボランティア活動の多様化と結びつくことが多いのですが,授業補助(エイド),移住外国人への日本語教育,通訳,美術館等のガイドなど,かなり高度の知識や技術を必要とする仕事が増えてきました。この分野ではボランティア活動から専門的職業に移行していく人も出ています。現時点では,その実現はまだ先のことになると思いますが,将来の展望として提案します。
(4) 生涯学習の拠点として,生涯学習センターの果たす機能への期待や評価が高く,その設置が切望されており,県北地域への拠点整備を検討していく必要があります。また,余裕教室等を利用した講座を開講することやインターネットを利用して在宅のまま受講できるシステムなど,身近な場で学習できることも学習機会の整備の一つとして視野に入れる必要があります。
(5) 教えたい人(講師),学びたい人(受講生)をそれぞれ登録し,学習ニーズが一致すれば講座を開設する「愛宕塾」にみられるようなシステムについては,自主的に集まったメンバーで企画を考えて講座を行う方法や企画・実施を担当するグループを公募(公募による競争方式)し,外部講師の指導を受けて事業を実施するなどの先導的な試みを提案します。
(6) 働く男女を対象とした夜間開講講座の一層の充実や通信制の講座が開講できる体制を整備することは,多くの人々に学習機会を提供していく上でとても重要なことです。また,乳幼児を持つ親の学習機会を保障する託児体制や施設・設備の一層の充実を図る必要があります。


2 学習の成果と活動をつなぐコーディネート機能の充実
<現状と課題>

(1) 学習者が学習によって得た知識や技能を地域社会における様々な活動の中で生かすことができるように人材バンクが設けられ,活用されています。
しかし,人材バンクにおけるコーディネート機能は,講座等の講師,各種行事の協力に関する人材の情報提供が中心となっています。今後はさらに,学習の成果を十分に生すことができる活動の場をコーディネートする機能の充実が求められます。
(2) 学習者が得た成果と新たな活動の場を結びつけるためには,より多くの情報が不可欠です。そのためには,それぞれの地域や機関の持つ活動の場や人材バンクとの連携に努める必要があります。
 
<提案事項>
(1) 国連が2001年を「ボランティア国際年」と決議し,社会の中でボランティア活動が一層活発化してきている状況の下,ボランティア自身が活動の場の発見を可能とする動機づけが重要です。人々が自覚・自立した意識に基づいて積極的にボランティア活動に関わり,そこで得た成果をさらにボランティア活動として生かし,地域社会で活躍することのできる社会的なシステムの構築を整えていくことが重要です。
このシステムは,インターネットを利用して,自らの学習の成果を生かすことのできる情報を検索するだけでなく,活動の予約や自ら行いたいこと,社会で生かしたいことを登録をすることができるものであると利用者にとって利便性の高いものとなります。
さらに,システムの端末機器を生涯学習センターや生涯学習関連施設等に設置することによって,学習者の便宜を図ると同時に,生涯学習を推進するための施設としての機能の充実につながります。
(2) 受講生の多様な学習ニーズ,学習指導要領改訂に伴う学校や地域社会からの要請に対応したコーディネート機能の充実を図るためには,PTA,青少年団体,ボランティア団体,NPO,地元企業など様々な機関・団体との連携が必要となります。
(3) インターネットを利用したホームページ等を作成・維持する専任の人員を配置して,常に最新の情報を提供すると同時に,配置された人員が学習者相互をつなぐ機会や広域的なネットワークを構築するなど,コーディネート機能を拡充することも必要です。


3 学習ボランティアの養成・活用の促進
<現状と課題>

(1) 生涯学習における学習ボランティア活動の促進を図るために,生涯学習活動の相談にあたる人材の養成や確保等,学習ボランティアのネットワークづくりが進められていますが,問題解決能力を持つ専門性や継続性のある活動を進めるためには,個人やグループによる活動が公的な機関での活動から,民間の非営利団体(NPOなど)による公益的な活動へ進展していくことも求められています。
(2) 生涯学習社会の進展に伴い,人々の様々な学習ニーズに対応し,そのような人々の学習を支援できるよう学習ボランティアの活動を支えるための講座の充実が期待されます。
 
<提案事項>
(1) 学習活動で培った知識や技能が地域で活用されるためには,個人の学習ニーズに合わせた文化・教養中心の講座だけでなく,生命,生活,生涯などの地域社会が求めるテーマを設定して領域を広げ,幅広い知識が得られる講座等を提供することが必要です。
ボランティア活動やNPO等の活動などについて一括して紹介できる掲示板付きのホームページを公的機関に開設し,新たに生まれてくるボランティア活動等を常に追加する一方,掲示板でボランティアを探している人とボランティア活動をしたい人が出会えるようなシステムを開発し,活動の活性化を促進することです。
(2) 生涯学習センターや公民館等でのリーダー育成の講座を開設し,地域の特色を生かしたボランティアリーダーの育成に努める必要があります。
また,生涯学習の多様化・高度化の現状など,時代に対応できる学習ボランティア養成のカリキュラムをつくる必要があります。
(3) 学習ボランティア相互の評価を行えるシステムの構築が必要です。例えば,学習支援の実践事例を持ち寄り研修を行う機会を設けることです。そうすることによって,学習ボランティア相互の情報交換の場となり,広く高度な情報が得られることになります。



<参考資料>
1 「社会参画をささえる生涯学習推進方策について-心豊かな地域社会づくりのために-(報告)」要旨
2 第5期茨城県生涯学習審議会委員名簿
3 第5期茨城県生涯学習審議会審議経過
4 茨城県生涯学習審議会条例

「社会参画をささえる生涯学習推進方策について」 2021-12-20 [茨城県生涯学習審議会]
「社会参画をささえる生涯学習推進方策について」
2021-12-20 [茨城県生涯学習審議会]
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